「2028年まで待てば20%」は本当か?暗号資産分離課税"ぬか喜び"の4論点を利確しない派が整理
この記事のポイント
- 東洋経済(2026-04-24)が分離課税は『ぬか喜び』と警告。論点1は対象が『特定暗号資産』に限定され、業界観測ではBTC・ETHの2銘柄に絞られる可能性
- 論点2は海外取引所・DeFi・ステーキング・レンディングが引き続き総合課税(最大55%)のまま。1人で4経路が混在する複雑さ
- 論点3は過去保有分の扱い。井林辰憲議員(自民党税調コアメンバー)は『取得時期ごとに税率を分ける処理はおそらくしない』と示唆(NADA NEWS 4/23)
- 論点4は申告ギャップ。総口座数1,403万に対し申告者は約8万人(1%未満)。分離課税後は『申告すべき人』が一気に増える
「暗号資産は2028年まで利確を待てば、税率20%でいける」──そう聞いて安心している人は、ぼくも含めて多いはずです。実際、ぼくも「2028年まで動かさない」と決めて含み損銘柄を塩漬けにしている口です。
ところが2026年4月24日、東洋経済オンラインが「投資家は『2028年まで利確を待つ』と大喜び、それでも”ぬか喜び”になりかねない暗号資産『分離課税』の小さくない落とし穴」という記事を出しました。税理士の八木橋泰仁氏は「世間はめちゃくちゃ喜んでいるが、本当にそれでいいの?」と開口一番で釘を刺しています。
正直、耳が痛い指摘でした。「待てば20%」だけを根拠に何もしていなかった自分の認識を改めて整理する必要があると思い、この記事をまとめています。利確しない派・ガチホ派の立場で、今知っておくべき4つの論点を順に整理していきます。
論点1:対象は「特定暗号資産」だけ。BTC・ETHの2銘柄説まで出ている
「一律20%」は半分ウソ
最初の論点は、分離課税の対象がそもそも限定的だということです。
2028年の分離課税は、金商法(金融商品取引法)の規制対象として指定された「特定暗号資産」に限って適用されます。指定リストは金融庁が今後公表する見込みですが、東洋経済の記事では業界観測として「ビットコインとイーサリアムの2銘柄だけになる可能性」が示唆されています。
この点は暗号資産分離課税の経路選択と特定暗号資産の実態の記事で整理していますが、当時のぼくの想定よりも対象が絞られる可能性が高くなってきました。
自分の保有銘柄が含まれるとは限らない
ぼくはETH・DOGE・XRP・BTCを保有しています。仮に対象が「BTC・ETH」の2銘柄に限定された場合、DOGEとXRPは分離課税の恩恵を受けられないことになります。
DeFiのガバナンストークン、海外取引所限定銘柄、ミームコイン系を持っている人は、もっと厳しい状況になります。「保有しているコインの大半が対象外」という結末も十分にあり得る前提で、自分のポートフォリオを見直しておく必要があります。
論点2:海外取引所・DeFi・レンディングは「総合課税のまま」
4つの経路が1人の中で混在する
2つ目の論点は、除外される取引形態の広さです。
東洋経済の記事をベースに整理すると、2028年以降の暗号資産課税は次の4カテゴリに分かれます。
| 取引形態 | 銘柄 | 課税方式 |
|---|---|---|
| 国内登録取引所 | 特定暗号資産(BTC・ETH等) | 分離課税 20.315% |
| 国内登録取引所 | 非特定銘柄 | 総合課税 最大55% |
| 海外取引所 | 全銘柄 | 総合課税 最大55% |
| DEX・DeFi | 全銘柄 | 総合課税 最大55% |
さらにステーキング報酬・レンディング報酬も、分離課税の対象外として総合課税が継続するという解釈が現状の主流です。これはレンディング・ステーキング報酬の現時点での解釈の記事でも整理しています。
「Excelで計算できない」レベルの実務負担
東洋経済の記事中で複数の専門家が口を揃えて指摘しているのが、計算の複雑さです。
1人の保有者の中で、最大で4つの経路を別々に管理する必要が出てきます。たとえば次のような人は、けっこう普通にいるはずです。
- BTCはBinance Japan(特定暗号資産・分離課税)
- DOGEはBinance Japan(非特定の可能性・総合課税)
- 過去に海外取引所で買ったETH(総合課税)
- ステーキング報酬(総合課税)
これを年末調整のついでに自力で処理するのは、正直、現実的ではありません。「申告分離課税で20%になるから簡単になる」という認識は、実務面ではむしろ逆で、計算と分類の手間は確実に増えます。
論点3:過去保有分の取得価額はどう扱われるのか(井林議員談)
「取得時期ごとに税率を分ける処理はおそらくしない」
3つ目の論点は、2028年以前から保有している暗号資産の扱いです。これは、ぼくのようなガチホ派にとって最大の関心事でした。
NADA NEWSが2026年4月23日に報じた井林辰憲議員(自民党税調コアメンバー)の発言は、次のような内容です。
取得時期ごとに税率を分けるような処理は、おそらく行わないのではないか
文字通り受け取れば、2028年以前に取得していた分も含めて、2028年以降の売却分には分離課税(20.315%)が適用される方向感です。これは含み益を抱えるガチホ派にとっては大きなプラスの示唆です。
ただし「方針段階」であることに注意
ここで注意したいのは、井林議員の発言は「示唆」のレベルであって、まだ法律として確定したわけではないという点です。
東洋経済の記事も「制度の詳細はこれから詰められる」と慎重な言い回しで書いており、過去保有分の扱いが最終的に変わる可能性もゼロではありません。
ぼくの個人的な受け取り方としては、「過去保有分も20%で行ける可能性が高い」と楽観しつつも、最終決定までは取得価額の記録は今までどおり厳密に残しておく、という構えです。取得価額の記録方法は利確しない派のための暗号資産管理ガイドに整理しています。
論点4:申告者は約8万人=1%未満。分離課税後は「申告すべき人」が一気に増える
利用者基盤と申告ギャップ
4つ目の論点は、そもそもの申告実態です。
NADA NEWSと東洋経済の数字を組み合わせると、こうなります。
- 取引所の総口座数:1,403万8,246口座(2026年4月1日時点・JVCEA)
- 稼働口座数:約880万
- 暗号資産で確定申告している人:約8万人
稼働口座ベースで見ても、申告している人は1%未満です。これは、そもそも利確していない人が大半であるという日本の保有者の実態を反映しています(暗号資産の確定申告は『1%どまり』も参照)。
分離課税が「申告のハードル」を下げる
ここが今回の制度改正の裏側のインパクトです。
分離課税が導入されると、20.315%という固定税率になり、確定申告の処理が単純化されます(特定暗号資産に限って言えば、ですが)。同時に、「税率が低くなったから売ろう」と考える人が増えます。結果として、申告すべき人の数が1%から大幅に増えることになります。
国税庁・税務当局の側から見ると、「これまで申告していなかった保有者をどう拾うか」が重要なテーマになります。マイナンバー連携・取引所からの法定調書・国際的な情報交換(CARFなど)の仕組みは、すでに整いつつあります。利確のタイミングで、過去の海外取引所利用や未申告分が芋づる式に出てくる可能性もゼロではありません。
ぼくとしては、「2028年に売る前提で動くなら、過去の取引履歴も含めて整理を始めるのは今のうち」というのが正直な感覚です。
利確しない派のぼくが、改めてやろうと決めたこと
東洋経済と井林議員談を読み込んで、気を引き締めたというのが正直な感想です。「待てば20%でいける」だけを安易に信じて何もしないのは、リスクが高い。とはいえパニックになるほどでもなく、やることは明確です。
1. 保有銘柄を「特定/非特定」の予測で仕分けしておく
BTC・ETH以外の銘柄も保有している場合、2028年以降にどの経路で課税されるかの予測仕分けを今のうちにやっておくと、慌てずに済みます。
ぼくの場合、ETH・XRP・DOGEを保有していますが、ETHは特定の可能性が濃厚、XRPは50/50、DOGEは厳しめ、という見立てで動いています。最終的に金融庁の指定が出てから調整しますが、「分離課税で行けない銘柄は、含み損益のうちにポジション調整を考える」という選択肢を持っておくほうが安全です。
2. 取引履歴の自動同期を始めておく
4経路のうち1つでも該当する人は、取引履歴の自動同期はもはや必須です。海外取引所・DeFi・レンディングを使っている人は特にそうです。
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3. 「待つ間」のポジションを利益化しておく
含み益を抱えたまま2028年まで待つ場合、レンディングで貸出して報酬を得るという選択肢があります。レンディング報酬は総合課税のままですが、相場が動かない期間でもポジションをただ寝かせておくよりは、保有量を増やせる可能性があります。
PBRレンディングのような業者は、業界最高水準の利率で貸出ができます。
報酬の課税方式・リスク・解約条件は事前に確認したうえで、自分のリスク許容度に合わせて検討する形になります。
4. シミュレーションで税額のイメージを掴む
最後に、「もし今売ったら/2028年に売ったら税額がどう変わるか」を試算しておくと、判断のブレが減ります。サイト内の分離課税シミュレーターで、現行制度と分離課税後の税額の差を簡易的に試算できます。
まとめ:「ぬか喜び」を「準備の時間」に変える
東洋経済の記事タイトルは強烈ですが、論点を整理すると、「ぬか喜び」になるかどうかは保有者の準備次第でもあります。整理し直すと、こうなります。
- 論点1:対象は特定暗号資産だけ。BTC・ETHの2銘柄説まで出ており、保有銘柄によっては恩恵ゼロもありうる
- 論点2:海外取引所・DeFi・レンディングは総合課税のまま。1人の中で最大4経路の混在が起きる
- 論点3:過去保有分も20%適用が濃厚(井林議員談)。ただし最終決定まで記録は厳密に
- 論点4:申告者は1%未満。分離課税後は「申告すべき人」が一気に増える
ぼく自身は、「ガチホ継続、売るなら2028年以降に一気に、特定暗号資産の分離課税で」というスタンスを変える気はありません。ただし、4つの論点を踏まえて、保有銘柄の予測仕分け・取引履歴の自動同期・シミュレーション、ここはもう少し早めに動こうと思っています。
「2028年まで待てば20%」だけを信じて何もしないのは、たしかに”ぬか喜び”になりかねません。逆に、4つの論点を理解したうえで動けば、残り1年8ヶ月は自分のポジションを整える貴重な時間になります。
ぼくも調べながら整理を続けています。新しい情報が出たら、この記事も更新します。
参考・出典
- 東洋経済オンライン「投資家は『2028年まで利確を待つ』と大喜び、それでも”ぬか喜び”になりかねない暗号資産『分離課税』の小さくない落とし穴」(2026年4月24日)
- NADA NEWS「暗号資産の分離課税、過去保有分も20%か──自民党税調コアメンバーの井林議員が語った舞台裏と次の課題」(2026年4月23日)
- アゴラ「暗号資産の税金は一律20%という勘違い:分離課税が適用されるものされないもの」(2026年4月24日)
- JVCEA口座数データ(2026年4月1日時点)
エム
暗号資産投資の実体験をベースに、確定申告・税金・損益計算の実務を解説しています。
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