利確しない派のための暗号資産管理ガイド|「保有してるだけ」でも今やっておくべき3つのこと
この記事のポイント
- 日本の暗号資産保有者の83%は預入10万円未満の少額保有。利確せず保有し続ける「利確しない派」が標準的な姿
- 利確しない派がやるべき3つの管理:取得価額を購入時点の数字で記録、年次で含み損益のスナップショット、取引履歴CSVの年次ダウンロード保管
- 「円に戻していない=非課税」ではない。暗号資産同士の交換・決済・ステーキング報酬の受領は利確の意図がなくても課税対象になる
- 取引所は永久に存続するわけではない。サービス終了で取引履歴が取得不能になる前に、自分の手元にデータを置いておくことが最も確実
暗号資産を利確していないなら、確定申告は不要です。これは事実です。ぼく自身、Binance Japanで現物を保有していますが、一度も利確していないので暗号資産での確定申告経験はありません。
ただ、「利確していない=何もしなくていい」ではありません。いざ売却する日、相続が発生する日、取引所が閉鎖される日——どれもこちらの都合を待ってくれないので、保有している今の時点からやっておくべき管理作業があります。
この記事では、利確しない派の立場から「税金を払う必要はないけど、備えておくと自分が楽になること」を整理しました。法人メディアはたいてい「確定申告が必要な人向け」の解説で終わっていて、日本の保有者の大半を占める「利確しない派」の実務がほとんど書かれていないので、同じ立場の人に届けばと思って書いています。
日本の保有者の83%は「少額の利確しない派」
まず前提として、日本の暗号資産保有者の実像を数字で押さえておきます。
金融庁・JVCEAの資料ベースでは、預入金額10万円未満のユーザーが約83.3%を占めています。つまり、保有者の大半は「数万円をとりあえず入れてみた」層で、ぼくが観測する範囲でも利確する人はこの中だとむしろ少数派です。
詳しい数字は日本の暗号資産の口座数は?利用者数・取引高の推移データにまとめていますが、ポイントはこの一文です。
「利確せずに保有しているだけ」が、日本の暗号資産保有者の標準的な姿。
日本経済新聞の2026年4月17日報道でも、暗号資産の確定申告率は『1%どまり』と指摘されています。この『1%どまり』の背景と、2028年1月の分離課税施行までにやっておくべき整理は暗号資産の確定申告は『1%どまり』|日経2026年4月・クリプタクト338人調査で見る実態でまとめています。
にもかかわらず、税金解説の記事や動画は「どう申告するか」に寄りがちで、「まだ利確していない人は何をすべきか」の情報は薄いままです。この抜けを、同じ立場から埋めていきます。
利確しなければ本当に課税されないのか
保有だけなら非課税、これは事実
暗号資産は売却・交換・使用のいずれかが発生した時点で所得が確定する仕組みです。保有しているだけ(含み益・含み損が動いているだけ)では課税されません。
これは株式投資と同じ理屈で、買値と売値の差額が確定したときに初めて課税対象になります。
ただし、利確しないつもりでも「課税イベント」が発生するケース
問題は、自分が「利確したつもりがない」取引でも税務上は利確扱いになるケースがあることです。
- 暗号資産同士の交換(BTC → ETHなど):交換時の時価で差益が確定
- 暗号資産での決済・買い物:支払時点の時価と取得価額の差額が所得に
- ステーキング・レンディング報酬の受領:受領時の時価が所得に
- エアドロップ・ハードフォーク:受領時の時価が所得に
「円に戻していないから大丈夫」と思っていたら、実は年間20万円を超える所得が発生していた——というのはよくあるパターンです。課税条件の詳細は暗号資産の確定申告の基礎にまとめていますが、「円に戻していない=非課税」ではないというのは覚えておいて損はないです。
ぼくの場合はBinance Japanで買った現物を動かさず保有しているだけなので、このあたりの課税イベントは今のところ発生していません。でも、DeFiや海外取引所のステーキングに手を出していた人は、知らないうちに申告義務が発生している可能性があります。
利確しない派がやっておくべき3つのこと
ここからが本題です。税金を払う必要がない今だからこそ、先回りしてやっておくと未来の自分が助かる作業が3つあります。
1. 取得価額を「買った時点の数字」で残す
いつ、いくらで、どの通貨を、何枚買ったか。この情報を後から正確に再現するのは、想像以上に大変です。
取引所の管理画面で見られる「保有資産」の画面は、現在の時価を表示しているだけで、取得価額の履歴は流れていきます。数年経つと「確か20万円分くらい買った気がする」程度しか思い出せなくなるのが普通です。
やっておくべきこと:
- 購入のたびに、取引所の取引履歴ページをスクリーンショットで残す
- 年に1回、取引履歴CSVをダウンロードして保管
- 円建ての購入金額と、取得したコインの枚数を別途メモしておく
ぼくはGoogleドライブに「暗号資産履歴」フォルダを作って、年次でCSVを放り込んでいます。取引所のサイトが将来どうなるかは誰にもわからないので、自分の手元にデータを置いておくことが結局いちばん確実です。
2. 年次で含み益・含み損をスナップショットする
利確しなくても、毎年の12月31日時点で含み損益がいくらかは把握しておきましょう。
理由は3つあります。
- 利確のタイミングを検討するときの材料になる
- 相続や贈与が発生したときに必要になる
- 税制改正(2028年予定の分離課税移行)のときに過去データが必要になる可能性がある
スナップショットは、取引所の「資産」画面のスクリーンショットで十分です。円換算の評価額と、保有コインの内訳が写っていればOKです。
税率の大きな変化は近い将来にありそうです。分離課税(一律20%程度)への移行スケジュールは暗号資産の分離課税はいつから?にまとめていますが、移行前後でどう動くかを判断するには、自分の含み損益がいくらあるかを把握しておかないと始まりません。
3. 取引履歴CSVを年次でダウンロード保管
取引所は永久に存続するわけではありません。サービス終了、日本市場撤退、買収による仕様変更などで、過去の取引履歴が取得できなくなるケースは実際に起きています。
ぼく自身、当時使っていた海外取引所は現在日本で利用できなくなっていて、もし「あの時の取引履歴を出してください」と言われても完全な形では出せません。記録を取っていなかった過去の自分に、いま一番後悔している部分です。
やるべきこと:
- 毎年1月に、前年分の取引履歴CSVをすべての取引所からダウンロード
- 2箇所以上に保管(ローカル+クラウド)
- 取引所の名前・ダウンロード日・対象期間をファイル名に含める
「面倒だから今度やる」を3年続けると、取り戻せないデータが積み上がっていきます。年に1回、1時間の作業でいいので、習慣化するのが一番安いコストで済みます。
「いつ利確するか」を考えるときの判断材料
投資助言はしませんが、利確を考えるときに数字として確認しておきたい項目を整理しておきます。買い時・売り時の話ではなく、「税金面で後悔しないための確認事項」の話です。
生活資金との分離ができているか
利確したお金の使い道が「生活費」になると、翌年の住民税・国民健康保険料の上昇で手取りが一気に削られます。給与所得がある人は特に、利確分は「全額を翌年に納税する可能性がある余剰資金」として扱うのが安全です。
税率の境界を意識する
現行制度では、暗号資産の利益は給与と合算して累進課税されます。所得税+住民税で最大55%です。年間の給与所得と暗号資産の利益を足した金額が、どの税率ブラケットに入るかで手取りが大きく変わります。
ざっくりした目安として、課税所得が330万円を超えると所得税率が10%から20%に、695万円を超えると23%に、900万円を超えると33%になります。給与とのバランスを見ながら「今年は20万円以内に抑える」「ブラケットをまたがない範囲で利確する」という調整もあり得ます。
分離課税移行を待つかどうか
2028年をめどに分離課税(一律20%程度)への移行が議論されています。現在55%の累進課税で課税される層にとっては、移行後に利確するほうが税率が下がる可能性があります。
ただし、これは法案成立前の見通しなので確約はありません。「分離課税まで待てば得」と決めつけて大きな判断をするのは危険です。制度の進捗は暗号資産の分離課税はいつから?で追いかけています。
また、分離課税は「一律20%」ではなく、特定暗号資産とそれ以外の線引き・申告分離ルートか総合課税ルートかの経路選択によって結果が変わります。利確のタイミングを判断する前に、暗号資産分離課税『一律20%は誤解』— 経路選択と特定暗号資産の実態も読んでおくと、自分がどちらのルートに乗るかの見通しが立ちやすくなります。
ぼくの場合:Binance Japanで現物を動かしていない
正直に書くと、ぼくは今もBinance Japanで現物を保有したまま動かしていません。利益はほぼゼロに近く、大きく儲けた話でもないので、利確するほどの含み益がそもそもない、というのが近い表現です。
それでも、管理作業だけは続けています。
- 四半期ごとに保有画面のスクリーンショット
- 年に1回、取引履歴CSVのダウンロード
- 税制改正のニュースを月1回チェック(暗号資産の規制2026年最新まとめのような更新情報を追う)
利確する予定がなくても、管理は保有と同じくらいセットの作業だと考えています。取引所の仕様変更や、ある日急に利確したくなるタイミングは、こちらの準備とは無関係に訪れます。
利確しない派が暗号資産を「働かせる」方法:レンディング
もうひとつ、利確しない派に知っておいてほしい選択肢があります。暗号資産を貸し出して利息を受け取る「レンディング」です。
保有しているだけでは暗号資産は何も生みません。レンディングでは、レンディング事業者に暗号資産を一定期間貸し出すことで、貸借料として利息を暗号資産で受け取れます。保有する暗号資産を売却するわけではないので、「手放したくないけど遊ばせておくのはもったいない」という利確しない派の考え方に合っています。
ぼくが見ている範囲で、利確しない派に向いていると感じるのがPBR Lendingです。![]()
- 年利10〜12%は業界最高水準(レギュラー10%、プレミアム12%)
- レギュラープランなら1ヶ月後から解約(返還申請)が可能
- BTC・ETH・USDT・USDCなど6銘柄対応
- 返還までの平均日数は3営業日以内(業界最短水準)
- 手数料は無料(ネットワーク送金手数料のみ)
注意点として、受け取った利息は雑所得として課税対象になります。この記事の冒頭で触れた「ステーキング・レンディング報酬の受領」に該当するケースです。利息が年間20万円を超える場合は確定申告が必要になるので、税務面の準備は暗号資産の確定申告ガイドを参照してください。
利確したくなったとき慌てないために:損益計算ツールを今から準備しておく
もうひとつ、利確しない派でも今のうちにやっておくと未来の自分が楽になる作業があります。損益計算ツールの準備です。
いざ利確するときに、その年だけのデータをまとめて取り込んで損益計算するのは大変です。過去に購入した分の取得価額を計算するには、購入時点までさかのぼった取引履歴がすべて必要になります。特に複数回に分けて買っている場合、総平均法や移動平均法で取得原価を出す作業は、手動では現実的ではありません。計算方法の詳細は暗号資産の損益計算の方法にまとめています。
ぼくが見ている範囲で、利確しない派でも最初に登録しておく価値があるのがクリプタクトです。![]()
- 無料プランで年間最大10万件の取引履歴を取り込める
- 国内30以上の取引所とAPI連携に対応(Binance Japanを含む国内取引所)
- DeFi・NFTの自動識別も無料プランから対応
- 1分単位の価格データで取得原価を自動算出
「利確するかどうかわからないけど、履歴だけは取り込んでおく」という使い方が無料でできるのが、利確しない派にとって相性がいいポイントです。
やっておくと何が楽になるか:
- 毎年の含み損益が自動で可視化されるので、スナップショット作業が省ける
- いざ利確するときに、その場で損益計算が完了する
- 取引所が閉鎖・仕様変更してもクリプタクト側にデータが残る
ぼく自身は「履歴だけは預けておく」用途で登録しておくのが一番ストレスが少ない使い方だと感じています。無料プランで始められるので、取引が発生したら履歴を取り込む、というルーチンを作るだけです。クリプタクトの公式サイトから無料登録できます。![]()
まとめ:利確しなくても「記録を残す」だけは続けよう
- 日本の暗号資産保有者の約83%は預入10万円未満で、利確しない派が多数
- 保有しているだけなら課税されないが、暗号資産同士の交換・決済・ステーキング等は課税イベントになるので注意
- 利確しない派がやっておくべきは「取得価額の記録」「年次スナップショット」「取引履歴CSVの保管」の3つ
- 取引所はいつまで存続するかわからないので、データは自分の手元に置く
- 2028年の分離課税移行を待つかは個別判断。ただし法案成立前の話なので確約はない
- 損益計算ツールは利確しない派でも「無料で履歴だけ預けておく」用途で活用できる
- 令和9年(2027年)4月施行予定の個人ウォレット差押え命令も視野に入れると、履歴と申告の整備は『いざ』のときの最強の防御線になる
- 2028年分離課税の「ぬか喜び」リスクを示唆する報道(東洋経済 2026-04-24・井林議員談 NADA NEWS 2026-04-23)は「2028年まで待てば20%」は本当か?分離課税”ぬか喜び”4論点で整理した
利確しない派の管理作業は、年に1回、1時間で終わります。でも、それを3年サボると取り戻せないデータが溜まっていきます。ぼく自身、過去に使っていた海外取引所の取引履歴を残しておかなかったことを今でも後悔しているので、同じ後悔をする人が減るといいなと思って、この記事を書きました。
エム
暗号資産投資の実体験をベースに、確定申告・税金・損益計算の実務を解説しています。
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